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「具体」


 

「具体」について。

今日、とある打ち合わせの流れで、 久々に大学院での研究テーマであった「サウンドスケープ(音風景)」について、記憶を呼び起こしていた。

「サウンドスケープ」とは、カナダの作曲家R・マリー・シェーファーが、環境の中における音の存在を表現するものとして提唱された言葉である。音の世界にも風景や景色があるという前提のもと、世界的に使われている。 視覚の陰にあり、日常では無意識化しがちな私たちの景観や環境への聴覚的感性や思考を喚起しようとするものである。

この研究をしていく中で、僕は「場所」というキーワードにたどりついた。音楽も造形も一方的な見方で感じるのではなく、様々な表現を通して「場所」という全感覚的に捉えられるものへと変容していくことを、可視化する内的なものから感じとった。

それが、僕のプロデュースしてきた「そら祭り」となったと実感している。 この「サウンドスケープ」については、今後詳しく書いていくことにして・・・。

そんな大学~大学院時代は、ずっと芸術への興味が深まり、美術館巡りなどをしていた。 特に衝撃だった作品・活動との出会いが、「ハプニング」・「具体」である。

1954年、吉原治良氏をリーダーに結成された「具体美術協会」。 『われわれはわれわれの精神が自由であるという證しを具體的に提示したいと念願しています。』 この言葉とそのグループの活動作品群に心が奮えたのを今でも覚えている。

「人のまねをするな」「今までにないものをつくれ」という吉原氏の指導のもと、今までの美術の概念に捉われないユニークな作品が生まれた。

さらに、観客や一般人を不意に巻き込む身体パフォーマンスやゲリラ的作品展示「ハプニング」を仕掛け、その創始者及び命名者となったアラン・カプローもその時知り、刺激を受けたのを覚えている。

この時に感じた発想やアイデアが今の自分の活動起源になっていたのだなと、 今日「サウンドスケープ」を思い起こし、過去の自分の言葉を整理している中で気づけた。 人とは違う考えをしっかりと練り、その中でやる意味があったらなんでもやっていい!という方向性がそこで生まれた。

この「具体」論、改めて今の音楽芸術にも必要な要素かと思って仕方がない。 最近感じている「生音」での表現の可能性。

それは、イメージや創造でなくイヴェント(ここでは具体的な表現のこと⇒ex.ライブなど)の重要性であることを表す。 「そら祭り」のような新しいコミュニティの形をつくったように、音楽そのもの・楽曲そのもの・ライブそのものでもこの時代に必要な表現を生み出せるはず。 そのための「生音」空間を構築したい。

新しい挑戦を音楽表現の中で具体的に実践していくことを決意した夜・・・。

2012.2.7 26:27 自宅にて

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